12月26日付『河北新報』によれば、食農教育推進モデル校に指定されている山形県高畠町の和田小学校では、児童たちが自分で作ったコメを給食で食べられないという事態が起きている。そこで、県教育委員会に電話で詳しく聞いてみた。
和田小では今年、児童たちが無農薬のコメを栽培した。そのコメを児童たちの要望で、給食で食べることに決めた。ところが県教育委員会が11月末、和田小に対して「乗り越えなければならないハードルがいくつかある」と横やりを入れたため見送られることとなった。
その理由は、「コメは主食であり、県学校給食会が『一元供給』することになっている」という。一元供給のメリットは、凶作時の安定供給、良質米の安価供給があげられている。
県教育委員会は「決して食べるなというわけでもなく、良質なコメは給食以外の学校行事などでどんどん食べてもらいたい」という。ただし、給食で作ったコメを食べるとなると、下記のような理由がハードルになると述べている。
1)和田小に供給されているコメは、近隣の学校なども含め、一定区域内でまとめて業者に炊飯を委託している。和田小だけがコメを自給することになった場合、コメを炊飯してもらう業者に輸送する費用や、コメを検査するためにかかる費用などで、コメ自体は無料とはいえ、逆に学校や保護者のコストが上がってしまうのではないかと懸念されている。
2)和田小がコメを自給することで安定供給体制が崩れ、他の学校のコメ供給に影響が出てくる恐れもある。
3)和田小が今回作ったコメの量は720キロで、約1,2ヵ月分。長期でのコメ供給を考えた場合にも問題は残る。
果たしてこうした理屈がどれほど子どもたちに説得力があるかは疑問である。むしろいろいろ問題があるとしても、子供たちが田んぼに入ってコメをつくる、そしてそれを食べるという試みを積極的にプッシュすべきだろう。それでこそ食農教育推進モデル校といえる。
「一元供給」などという考えさえ、すでに崩れ始めている。
高知市は2002年6月、県学校給食会との取引を停止し、直接コメなどを調達する方針を表明。2003年度から実施することが決まった。約1500万円のコスト削減となる見通し。
2001年4月から横浜市学校給食会も県学校給食会以外の独自ルートでの調達を開始、こちらは約7000万円の経費節減になる模様。
逆にコストが高くなっても地元産米を導入する例もある。2001年4月から宮城・角田市や鹿児島・財部町が県学校給食会を通さず地元産米を導入している。
和田小では野菜はすでに自給されている。和田小では来年もコメ栽培を実施する方針だという。子どもたちにとって、自分たちで作ったコメを自分たちで食べることができないという摩訶不思議な出来事は、教育行政の実相を知らせる反面教師にはなった。(田中潤) |
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