長野県の田中康夫知事は、12月5日開会の県議会に「長野県知事の在職期間に関する条例案」を提出した。この条例案の趣旨について、田中知事は県議会での趣旨説明において、「知事の多選に伴う弊害の発生を防止するため、知事は連続して3期を超えて在職しないよう努める旨、規定するものです。私を含めても戦後の知事が合わせて4名という都道府県は、全国に例を見ません。長野県が今後、常に納税者の視点に立った変革し続ける行政組織であるためにも、明文化が望まれます」と述べた。
自治体の首長の多選に関しては、すでに東京・中野区において、議員立法による多選自粛条例案が3月議会に提出されたあと、区長選をはさんで10月に再提案されており、また杉並区でも、11月議会に区長提案として「多選自粛条例案」が提出され、継続審議となっている。
かつて、1997年に多選禁止の公約を掲げて当選した秋田県の寺田知事が多選禁止条例制定の検討を始めたところ、自治省(当時)から、憲法上疑義があるといった見解が示され、条例案の提出を断念したことがある。しかし、99年には自治省の「首長の多選見直し問題調査研究会」は、多選禁止が憲法上許される可能性があり、国民の間で十分な論議が必要だとする報告書をまとめている。
国会審議においては、2001年11月27日の衆院総務委員会で山名靖英・総務大臣政務官は、「公職選挙法にはそのような規定はなく、条例によって多選を禁止する規定を設けることはできない」との認識を示している。また、99年6月2日の衆議院・行政改革に関する特別委員会において、野田(毅)自治大臣は「公選法を改正して被選挙権の制限を条例にゆだねることができるのかどうかということについては、これは一つの視点だろうと思います」と述べ、「各党間でこの問題についてさらに詰めた御議論をいただくなら大変ありがたい」と答弁している。
なお、自民党は96年10月の総選挙において、「知事の多選禁止などの制度を検討します」と公約し、さらに99年10月の自自公三党連立政権合意書において、「地方分権の健全な発展を確保するため、都道府県・政令市等の首長の多選を制限する。その具体的方法については、今後協議する」との項目を盛り込んでいる。
長野県議会は12月20日に閉会するが、長野県の条例案がいかなる結果になるかはわからない。明確に多選を禁止する条例ならば公職選挙法に違反するとクレームがつく可能性が高いが、自粛とか努力目標の場合にいかなる扱いとなるか、また、可決されたとして実際に効力を持つのかどうかなどが議論の対象となるだろう。(並河信乃) |
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