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「ごみを増やして環境対策」という矛盾が噴出

2002/12/12

 ごみが多ければ多いほど環境のためになるというおかしな事態が起きている。

 今月1日から施行された改正産業廃棄物処理法によって、ダイオキシン規制が強化。各自治体にある多くのごみ焼却炉が基準を満たさず違反になる。そのため、以前のごみ焼却炉を廃止して他の自治体にごみ焼却を委託したり、ごみ焼却炉を新設するなどの動きが、各自治体で起きている。

 神奈川県では、横浜市栄区の栄工場、鎌倉市の今泉クリーンセンター、寒川町クリーンセンターのごみ焼却施設が稼動を休止。それらの施設は、休止炉を新基準に見合うよう改修して再稼動させるまで他の自治体に廃棄物を委託するか、今後このまま委託を続け、休止炉を廃止する方向で検討されている。

 河北新報によれば、山形県最上の8市町村では、鮎川村に新しいごみ焼却炉である「エコプラザもがみ」を新設。同法施行の1日より、本格稼動を始めた。総工費は60億円。2万平方メートルの敷地に6階建て。高さ約60メートルの煙突を設置。24時間操業で約90トンのごみ焼却が可能な高性能焼却炉。

 ところが、最上地方のごみは一日平均75トン。900度以上の高温処理ならばダイオキシンは発生しないのだが、これでは燃焼温度が低下してしまい、ダイオキシンが発生してしまう恐れが出てきた。

 それを受けて、最上広域市町村圏事務組合(理事長・高橋栄一郎新庄市長)がそれまで「不燃ごみ」であるビニール、プラスティック、アルミホイルなどを「可燃ごみ」に変更し、燃焼するごみ排出量を多くすることで、燃焼温度を上げようとしている。

 この突然のごみ分別法変更については、住民から不満の声が上がっており、組合がごみ排出量の予測を誤ったのではないかという批判も強まっているという。

 最上地方では、1999年度から現行のごみ分別法を導入して以来、ごみ排出量が1万6000から1万8000トン程度に抑えられるなど、ごみ削減策を積極的に進め、成功させてきた。それだけに、今回のごみ分別の変更によって、従来のごみ削減策と矛盾をきたす結果となってしまった。

 ダイオキシン対策として1997年に厚生省(現在は環境庁所管)が打ち出した「高温、連続、大量焼却」のための大型焼却炉への転換方針が環境政策としておかしなことは当時から指摘されており、これが現実にごみ削減策運動に水を差す動きとなって噴出してしまった。もっと幅広い視点から環境問題を考えていかない限り、今後も同じような矛盾が起こるだろう。(田中潤)