市町村合併をめぐって話題を呼んでいる「西尾私案」とは、「私人たる西尾勝の案ではなく、地方制度調査会副会長という公人としての案である」と、11月23日に開かれた日本自治学会のシンポジウムの席上で西尾氏自身が説明した。
西尾氏の説明によれば、「西尾私案」は次のような性格のものだ、とのことである。
1) 案の作成は地方制度調査会長から今後の議論のための叩き台を出すようにとの依頼を受けたもので、作成にあたってはこれまでの地方制度調査会の議論を踏まえ、また、各方面からの意見も参酌した。
2) したがって、すべてが西尾氏の考えというわけではない。 3) また、これが最終的な落としどころというわけでもない。
とはいえ、西尾氏は、「私案」には個人の考えも色濃く含まれていることを認めており、「それだけは今後の議論の中で断固死守したい」と次の3点を挙げた。
1) 合併特例法の期限切れ以降も、一定期間、さらに合併推進を続けること。
今の合併推進の結果、3200の自治体(市町村)が2200程度になるだけであり、仮に人口1万人以下の自治体を小規模自治体と考えると、3分の1がそれに該当する。そうした多くの自治体を対象に突然ドラスティックな措置を執るべきではない。小規模自治体についてなんらかの措置をとるというならば、まず最少人口の目標を明示して、各自治体の対応をもう一度促すのが手順である。
2) 小規模自治体の選択は、事務配分の特例方式と内部団体移行方式の2本立てとし、該当自治体の選択に委ねること。
地方制度調査会では、小規模自治体の権限を制限すべしという議論が大勢を占めている。他の自治体に包含されても、基礎自治体内部にさらに小さな自治の仕組みを設けて、旧自治体の自治を維持していくという考え方は少数説であるが、この考えには個人として思い入れが深く、是非これは選択肢の一つとして実現させたい。
3) 強制合併ではなく、あくまでも住民の選択を尊重すること。
一番強力なものは、国会で基準を決めて強制合併させることであるが、こうした方式は避けるべきである。合併を選ぶか、小規模のまま存続し事務を制限されるか、あるいは他の団体の内部団体となるか、という住民の選択肢を残すべきである。
以上の説明の中で、西尾氏は現在進められている半強制的な合併推進は政治の強い要請によるもので、必ずしも賛成ではないとのニュアンスを言外に滲ませたが、一方、今後の厳しい状況を考えると、合併そのものは不可避であるとの判断も示した。
この西尾氏の説明に対し、司会の富野暉一郎龍谷大学教授(元逗子市長)は、「大きな強制の中の小さな選択」と評した。(並河信乃) |
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