10月4日に開催された第3回市民税調(行革国民会議主催)の席上、山崎泰彦上智大学教授は、独立した高齢者医療保険制度の実現は遠のき、また、税金で高齢者医療を支える考え方も難しいとの見方を明らかにした。
高齢者医療問題を解決するために、介護保険と高齢者医療とをあわせた高齢者医療保険制度を創設し、それを税金で負担する案はひとつの有力な解決策であったが、今年10月からの改正で高齢者医療の対象は75歳からに引き上げられ、介護保険適用との間に10歳のギャップが生まれることになった。また、医療給付費に占める税金の割合は今回の改正によっても2025年には42%にも達することになり、さらに税の負担割合を増やすことは現実には難しい。9月25日に発表された医療保険制度改革についての坂口厚労相試案には「新しい高齢者医療制度を含む制度改正」という文言も見られるが、以上のことから考えると、独立した高齢者医療制度の創設は事実上難しいことになる。
坂口試案は国保を都道府県単位に広域化すること、政管健保を都道府県単位に分割すること、健保組合については事業所単位で加入できる新たな法人を設立することなどにより、医療保険制度を地域的に一元化し、保険者自治を強化することを目指すものであるが、この場合でも年齢構成や所得構成を調整するために組合健保が資金を拠出することには変わりなく、その同意が得られるかどうかが問題となる。
席上、連合からは退職した高齢者については組合健保が支える「突き抜け方式」の提案があり、さらに、増大する高齢者医療費そのものに手をつけずに財政的工面の議論だけをしてみても意味がないとの意見も出された。
市民税調としては、さらに医療年金制度についての議論を詰めるとともに、税・財政問題一般については国・地方間の財政調整の問題を次回に議論することとなった。(並河信乃) |
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