6月24日の行革国民会議の総会で、日本経済研究センターの八代尚宏理事長から、「規制改革の現状と今後の課題 構造改革特区を中心に」をテーマにお話し頂き、意見交換しました。八代理事長は総合規制改革会議の委員として、医療、福祉、教育などの社会的規制の改革に取り組まれ、昨年は特区についてのワーキング・グループの主査を務め、また近く発足する特区についての評価委員会の委員長に就任する予定です。特区についての八代理事長のご説明は以下の通りです。
今年の4月から実施された構造改革特区だが、そもそもなぜ「特区」方式でやらなければならないのか、やるのなら全国一律でやれという議論もあった。しかし、規制改革は「総論賛成・各論反対」の壁にぶつかり、改革が阻まれるというケースが目立つ。そこで、地域限定で規制を外して、その結果に弊害がなければ全国展開するという社会的実験を行う必要が出てくる。したがって、特区とは全国展開するための過渡的なもので、ある意味ではなるべく早めになくしていくことが望ましい。
特区の構想を総合規制改革会議で昨年春に打ち出したときには、果たしてこれが実現するのかどうか分からなかった。しかし、極めて短時間でこれが実現することとなった。その理由として、内閣に専任の特区推進室を設け、担当大臣を置いたことが第一に挙げられる。内閣が地方自治体の要望を受け付け、推進室が各省と交渉する方式となったため、特区の決定から実施までのスピードも早まり、各省もある程度は真剣に協力するという結果となった。
特区に対しては、財政支援措置を一切設けないということも特徴で、特区では国は規制を緩和する以外に何もしてくれない。独自のビジネス構想を持っている自治体の束縛を取り除くことが目的なので、国の援助を期待している自治体にとっては、特区によるメリットは何もない。
今後の課題としては、いかにして特区を有効に使ってもらうかということが大事だ。たとえば、農業特区のように、これまで株式会社の農地利用を一切認めなかったものが、賃貸方式なら認めるようになるなど、いくつか目玉となるようなものが生まれてきているが、しかし全体としては小粒な提案が多く、画期的なものはまだまだ少ない。
複数の省庁の規制を一斉に緩和するということも重要で、現時点では単一の省庁の規制を緩和するものが多い。厚労省、国交省、環境省など複数の官庁にまがたる規制でがんじがらめになっているものを、特区によって一気に取り外すような提案が増えていくことが望ましい。
さらに、特区を口実にして全国的な規制改革が阻まれるということも防がなければならない。近く評価委員会が発足するが、特区による具体的な効果を実証するのではなく、弊害がなかったかどうかを検証し、弊害さえなければ特区を全国で適用できるというようにしていくことが重要である。(田中潤) |