青森・野辺地町は6月8日、2003年度決算で累積赤字が2億6000万円から1億3000万円に半減したことを明らかにした。町は2003年度から財政再建計画を策定し、財政の健全化に取り組んでおり、2004年度一般会計予算は黒字基調となった。入札や委託契約の見直し、人事院勧告に基づく人件費削減、退職者不補充などの徹底した歳出抑制が功を奏した格好。また、町長が管理者を務める北部上北広域事務組合でも歳出の見直しを図り、負担金の一部4800万円が減額。下北地域広域行政事務組合の負担金も1000万円近く戻った。ただし、町は2005年度から、財政再建計画で東通原発の電源立地地域対策交付金を歳入として見込んでいるが、建設計画が遅れている。
財政赤字に苦しむ自治体はほかにも多い。
広島市は4月、2004〜2007年度の収支計画である第2次財政健全化計画を公表した。2007年度末の収支不足額は1395億円に達するため、事業の見直しや人件費抑制などで4年間に1477億円の歳出減を図るほか、市税収納率の向上や受益者負担の適正化などで79億円の歳入増を図り、1556億円を確保。地方交付税の減少などで159億円の歳入減があっても、収支は2億円のプラスになる。歳出削減の内訳は、整備済みの事業の起債償還金1227億円を、償還期間の延長などで967億円に圧縮。大規模プロジェクトへの実質的な投資可能額583億円は6割減の238億円、その他の公共工事も540億円を458億円とする。また、補助金カットなど事務事業見直しで365億円を縮減。職員は350人削減し、人件費120億円を減らす。
滋賀・志賀町は4月、2004〜2008年度にかけての財政健全化プログラムを策定した。町税が年々平均2%減、地方交付税も2008年度には2003年度比で3割減と仮定した場合、現行の財政運営を続けると財源不足額は32億円になると試算。幼稚園や保育所の保育料の値上げ、町職員駐車場の有料化などで6億3000万円を確保し、職員の月額給与を2〜6.5%削減、通学補助など町単独補助金を2割カットするなどで21億6000万円を抑制して、財政再建団体への転落回避を目指す。
大分市は5月27日、中期財政収支の見直し結果を発表。2007年度には基金が枯渇し87億円の赤字となり、、2008年度は赤字額が183億円で地方債の発行などが制限される財政再建団体に転落するとして、「行政改革アクションプラン」を見直した。2007年度までに166億円、2008年度までに226億円の大幅なコスト削減を目標に、可能な限り歳出を抑制する一方で歳入増も図る。歳出削減の内訳は、合併後の人件費の削減で55億円、補助金削減や事務事業見直し、特別会計への一般会計からの繰り入れ削減などで70億円、公共事業などのコスト削減による予算の総枠抑制で80億円など。
沖縄・平良市は5月25日、累積赤字の縮小を目指して、市民の視線で行財政改革を監視してもらう、市民委員会を発足させた。公募と市長指名で選ばれた10人の委員に委嘱。市当局がまとめた公共工事や手数料の見直し案などを審議して、市長に答申する。市長はそれを受けて最終決定する。同市は3月に、6年ぶり2度目となる「財政非常事態」を全職員400人に宣言した。市は赤字解消を目指して「財政非常事態克服実践本部」を設置している。
福岡・田川市は2004年度当初予算で、財政調整基金などの8基金から10億9000万円を取り崩し、税収不足を補った。同市は2001年度末で旧産炭地支援の石炭6法が失効したため財政難に悩んでいる。そこで、市は1月から「エコ・オフィス」を実施。電気や水道、紙類などの使用量を2002年度比で5%以上削減する。たとえば、1回の昇降で50円かかるエレベーターを出勤時は休止。職場ごとにあったコーヒーメーカーや冷蔵庫、電気ポットを撤去。携帯電話の充電や、水道料削減のために弁当箱を洗うことなども禁止。ごみ箱は各課で1つとし、徹底して分別する。職員は毎月、節約作戦の38ポイントの達成度をチェックして、意識向上を図る。その結果、1〜3月までの電気使用量は前年度比で平均85%に抑えることに成功している。
鳥取・米子市は2004年度から、財政危機のため光熱水費の10%削減を決定。経費削減の一環として市庁舎内のエレベーターの「閉」ボタンを使用しないよう庁内に通知した。エレベーターのボタンにはカバーが取り付けた。開閉式になっており、どうしても必要な場合はカバーを開けて押すことができる。また、エレベーター内にある3本の照明も2本にした。
県が市町村の財政再建に助言する例もある。
山形県は3月、市町村財政の健全化に向けた具体策などを助言する特別対策チームを発足させた。県市町村課が中心となり、行政、財政、理財、税を担当する職員のほか、各総合支庁も加わる。行政運営についての相談を受けるほか、起債が制限される「再建団体」に転落しないように行財政運営について助言をする。
沖縄県は4月、市町村課内に「市町村財政対策チーム」を設置、歳入確保や歳出抑制に向けた具体的な指導、助言を行う態勢を整えた。市町村と財政危機に対する共通認識を深めた上で、個別事情に応じた対応策を練る構え。(田中潤)
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