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ちぢに乱れる合併への思惑、米子周辺

2003/03/04

 鳥取県の西部、米子市周辺の合併問題が2転、3転、混迷を深めている。

 米子市は境港市と西伯、日野両郡の町村との大規模な合併を実現して人口20万人以上の「特例市」になりたいのが本音。中海を挟んですぐ隣りの島根県・松江市が7町村との合併で人口20万近い都市になるし、鳥取県の県庁所在地、鳥取市も8町村との合併で「特例市」を目指している。米子も合併によって日本海の一大拠点都市にならないと、松江、鳥取の間で埋没した存在になりかねないという心配がある。

 ところが、周辺市町村の方は米子市の思惑とどうも呼吸が合わない。
 その要因は2つ。
 1つは、米子市周辺で唯一の市である境港市が米子との合併を拒否したこと。市議会は昨年12月「境港市存続についての決議」をした。これ受けて黒見哲夫市長は「合併ではなく、単独存続する」との単独宣言した。

 もう1つは、周辺の小規模町村にとってみると、米子が松江、鳥取の間で埋没したくない気持ちと同じように、米子が大都市になると自分たちの町や村が埋没してしまいはしないかという懸念がある。その上に境港市長の単独宣言が出て、合併を敬遠する動きを加速してしまった。
 米子市の東側に位置する3つの町(中山町・名和町・大山町)は1月1日に合併法定協を設置し、3町と米子市の間に位置する淀江町、日吉津村にも参加を求めている。
 米子市の南側に位置する2つの町(西伯町・会見町)は1月14日に、それぞれ合併法定協を設置した。会見町の住民の中には米子市との合併を求める声もあるが、会見町長は「リコール覚悟」で西伯町との合併を進めていくという。
 岸本町と溝口町の各議会も2町の合併方針を決定した。これも境港市の単独宣言の影響が大きく、岸本町はそれまで広域合併に向けて動いていたが、2月14日に再度の住民アンケートを行った結果、溝口町との合併を求める声が過半数となったためだ。

 境港市の単独宣言で「特例市構想」が頓挫した米子市は、周辺町村の中でも周辺部に位置する7町村(淀江町・岸本町・溝口町・江府町・日野町・日南町・日吉津村)に対して合併を働きかけている。しかし、これらの各町村の思惑も複雑に入り組み、ほぐれ難い混線状況にある。

 淀江町議会は1月15日、中山町・名和町・大山町から求められていた合併協への参加を否決。日吉津村との合併で動き出したが、日吉津村との合併協議が困難なこと、住民団体が米子市との合併協設置を直接請求したことから、町議会は2月21日、米子市との合併方針を決めた。
 江府町・日野町・日南町は、溝口も含めた合併を検討中だが、溝口町が岸本町との2町で合併方針を決めたのを受けて、2月19日、江府町と日野町の各議会は3町での合併方針を決定、日南町は態度を保留している。

 やみくもに合併構想の規模を大きくしても、吸収される形になる弱小自治体は容易に踏み出せない。米子市周辺町村の動きは、その典型例だろうが、錯綜状態にあるだけに今後どのような展開を見せるかはわからない。混線の発端になった境港市自体、2月14日には住民団体が米子市との合併協設置を求めて4745人の署名簿を提出した。市長自身が議会決議前までは広域合併を否定していなかっただけに境港市の態度が変わらないとは限らない。(田中潤)

<特例市>2000年4月に施行された制度で、人口20万人以上の都市を対象に、「特例市」になると都道府県の権限の一部が委譲される。2003年度移行予定都市も含めて計58市。騒音・悪臭を規制する地域の規制など16法律20項目の権限がある。
<中核市>人口30万人以上が対象。「中核市」になると、保健所設置など特例市では認められていない権限が委譲されている。2003年度移行予定都市も含めて計37市。